□ はじめに皆さん、こんにちは。一度は耳にしたことがある「ホスピタリティ」という言葉。聞いたことはあるけれど、その意味を理解して行動に移せている方はあまりいないのではないでしょうか。ちなみに、ホスピタリティという言葉は、相手への思いやり、丁寧なおもてなし、歓待の気持ちを意味しています。ホスピタリティはよく「サービス」と比較されますが、この二つは明確に異なっています。まず、サービスとは、サービスを受ける側が主人であり、提供する側がその要求に応じて行動することを意味します。なお、「サービス」の語源はラテン語の「servus(奴隷または召使い)」で、指示通りに業務をこなす役割を示しています。それに対して、ホスピタリティは、ゲストが気持ちの良い時間を過ごせるようにして満足度を高めることに重点を置いています。具体例を挙げると、レストランであれば、単に「良い接客」を提供するだけでなく、お客様の好みを覚えたり、特別なリクエストに応じたりすることで、食事の時間を一層楽しんでもらえるように工夫を凝らします。ホスピタリティは、ゲストの全体的な満足度や心地よさを追求する包括的な概念ということになります。この記事では、展示会の来場者との関係を深めるために役立つホスピタリティの視点を提供してまいります。ぜひご一読ください。1. 「リスク」という言葉に注目してみる唐突ですが、「ホスピタリティ」とは何かを考えるために、まず「リスク」という言葉に注目してみたいと思います。英語で「Take a risk」という表現がありますが、これは「危険を冒す」「思い切ってやってみる」という意味で、マイナスの結果を引き起こす可能性があることを指します。逆に、「Play it safe」は「冒険しない」「無難に行く」といった意味の英語表現です。数学的な問題はさておき、リスクの程度を数量的に意識し、「やるか、やらないか」を決められるからこそ「リスクを取る」と言えるのであり、特に投資の分野ではこの表現がよく使われます。例えば、株式市場では(特にアメリカの主要な株価指数であるS&P500に関して言えば)、長期的な平均リターンは年率約7〜8%が期待できますが、同時に市場変動によって資本を失うリスクも存在します。それでも多くの投資家は、利益を追求するためにリスクを取ります。上記を踏まえると、「リスク」という言葉は人間関係においてはあまり当てはまらない気がします。危険を冒さないと人間関係を構築できず、また、相手の行動を数字で捉えないといけないならば、世の中は殺伐とし過ぎていて気軽に話すことすら難しくなってしまいますし、人間関係がリスクであるなら、もはや洞窟に籠るしかなくなります。それよりも、予測できない事象が起こる可能性を考えると「不確実性」という表現の方が適切です。20世紀初頭に活躍したシカゴ学派の経済学者フランク・H・ナイトは、著書『リスク、不確実性、利潤』でリスクと不確実性の違いを明確にしていました。結論から言えば、不確実性とは、確率分布が未知の事象を指します。例えば、新しい市場に製品を投入する際の状況を思い浮かべると分かり易いかもしれません。神頼みとまでは言わないものの、成功確率が分かるものでもないと思います。確率分布が既知である場合(例えば、サイコロを振ると各面が出る確率は6分の1です)とは異なり、不確実性の高い状況では、一般的な保険によるヘッジが困難で、経営者や企業家にとっては挑戦となります。ナイトは、このような不確実性を引き受けるからこそ経営者や企業家は利益を手にすることが出来ると説明していました。言い換えれば、不確実性とは、具体的な確率を想定できない事象であり、確率で表せる「リスク」とは異なるものです。誤解を恐れずに言えば、「えいっ、やーっ」といわば清水の舞台から飛び降りるような状況(極端すぎますが…)かもしれません。「リスク」と「不確実性」の違いを明確にすることで、人間関係におけるホスピタリティに新たな視点を得ることができます。投資の世界では確率が計算できる「リスク」が重要ですが、人間関係においては「不確実性」が大きな意味を持っています。この違いを理解することで、展示会における来場者とのコミュニケーションにおいても新たなアプローチが可能になります。「不確実性」を受け入れ多様な来場者に対応する即興性を持つことで、成功を収める可能性が高まるでしょう。2. 不確実性のマネジメント「ホスピタリティ」について考える際、不確実性をどのようにマネジメントするかが重要です。「お客様は神様です」という日本の風潮は、真のホスピタリティとは言えません。それでは「servus(ラテン語で奴隷)」になってしまいます。サービス提供の場面では、何が起こるか確率で表せない不確実性に対して、どう対応するかの管理、あるいはマネジメントが非常に重要なのです。実例を挙げたいと思います。リッツ・カールトンの元日本支社長である高野登氏の著書『リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間』によれば、リッツ・カールトンでは現場スタッフに2000ドル(約30万円)の決裁権が与えられ、スタッフが「真実の瞬間(MOT)」に強力な力を発揮できる体制が整っているそうです。その例として、ある利用客が忘れ物をしたことに気づきホテルに連絡したところ、スタッフが新幹線で大阪から東京に駆けつけて忘れ物を届けたというエピソードがあります。しかし、これを聞いた多くの業界関係者はきっとこう思うでしょう。「そんなことをして大丈夫なのか?どのお客様にもやっていたら、ホテルは潰れてしまう」と。ただ、ここで重要なのは、スタッフが提供するサービスの選択肢を狭めずに、お客様にとって最良の手段を選び即座に採用できるシステムと環境を整えるという点であって、毎回必ず新幹線で届けるという点ではないのです。人々に感動を与えるためには、不確実性の高い状況でどのように対応するかが大切です。不確実性をマネジメントすることこそが、ホスピタリティの真髄と言えるでしょう。3. 深い絆を築く展示会術展示会において、単なる製品やサービスの紹介を超え、来場者との深いつながりを築くことは非常に重要です。そのためには、不確実性の高い状況をどう活かすかを考え、マニュアル通りではない対応が求められます。もちろん、マニュアルの価値を否定するわけではありません。社員全員が基礎知識やスキルを共有し、標準化するためにマニュアルは有効です。また、台本(スクリプト)を用いることで、来場者がどのスタッフと話しても一貫した説明を受けられる利点があります。接客のミスや不一致を最小限に抑えることも可能です。しかし、展示会での実体験を持つ方ならご存知の通り、画一的な対応が常に最良とは限りません。展示会には様々な目的を持った来場者が訪れ、自社ブースに足を運ぶ理由も千差万別です。事前に用意した接客ガイドに従うだけでは、通り一遍の対応に陥り、「突き放された」と感じさせるリスクもあります。そうなると、せっかくのチャンスを逃してしまう可能性があります。この問題を解決するために、不確実性をマネジメントする視点が重要です。具体的には、即興的な対応力が求められます。もちろん、毎回予想外のことが起こるわけでもなく、そもそも何を準備するべきか分からないこともありますが、その対策として、頭の片隅に「キーワード」を留めておくと良いでしょう。リッツ・カールトンの例で言えば、そのキーワードは「ミスティーク(神秘性)」です。リッツ・カールトンでは、スタッフが顧客に驚くような体験を提供します。これが「ミスティーク」と呼ばれるもので、顧客の言葉にされない願望を先読みして満たすサービスです。顧客は「あれ?どうして分かったの?」と感じることでしょう。ここで一つ気を付けるべきポイントを挙げたいと思います。よく聞きそうなフレーズですが、「市場のニーズをきちんと吸い上げて計画を立て、マニュアルも作成しよう」というものです。しかし、実は、この考え方には落とし穴があります。実際には、市場のニーズは抽象的で、あるのはひとりひとりの顧客のニーズだけです。市場のニーズといった瞬間に顧客の顔が見えなくなり、感性の交流が途絶える危険性があります。したがって、「相対している顧客のことが見えていますか?」ということは常に忘れるわけにはいきません。目の前にいる1人の顧客に目を向け「満足」してもらうためのキーワードがミスティークなのです。展示会でのおもてなしが十分にできていると感じていても、実際にはマニュアル通りの対応でしかなく、来場者の期待に応えられていない場合もあります。例えば、来場者の荷物を置くスペースの確保(床に荷物を置くのは不快です)や、雨の日に傘を置く場所の案内、冷房が効いていて寒いと感じるであろう来場者には相手から指摘される前にブランケットを渡すなど、先回りして行動する意識をちゃんと持っているのかといった些細な心配りが重要なのです。□ さいごにこうした一連の取り組みを通じて、来場者は展示会が単なる情報収集の場であるだけでなく、特別な体験と深いコミュニケーションを提供する場であると感じることができます。その結果、来場者と企業の関係が一層深まり、長期的なリレーションシップが築かれるのです。この視点に立つホスピタリティは、展示会の成功を大きく引き寄せる鍵となるでしょう。展示会は、企業と顧客が直接触れ合い、信頼を築くための貴重な機会です。小さなサプライズを取り入れることで、来場者にとって忘れられない特別な時間を提供し、深い絆を形成することができます。リッツ・カールトンの実例からも学べるように、来場者の心に深く刻まれる展示会を実現することで、企業のブランド価値も高めることができ、次回の展示会への期待も高めることができるのです。読んでいただき、ありがとうございました。次回の展示会での成功を心よりお祈りしております。株式会社ピーク・ワンは、マーケティングを次のステップへ進化させたい企業様に豊富な実績を基にしたサポートを提供しております。また、イベント受付管理システム「レジスタ」や事務局支援クラウド「セクレタ」といったシステムも提供しております。当社が提供するイベントDXサービス「FrontDeskシリーズ」では、イベント受付からリード獲得までをサポートするさまざまなソリューションを展開しています。特に、「レジスタ」は展示会での来場者情報取得を支援する受付管理ソリューションであり、オプション機能の「Quick Lead」「Quick Flyer」「Quick Check-in」を活用することで、最新の展示会マーケティングをタイムラグなく実現します。さらに、株式会社ピーク・ワンには数多くの企業イベントの受付を構築してきたプロが在籍し、展示会イベント受付オンサイトサポートサービス「受付の達人」も提供しております。当社は30年以上の経験とノウハウを活かし、貴社のイベントを成功へと導きます。トラブルの未然防止、スムーズな受付運営、そして参加者一人一人に最良の体験を提供することで、イベント成功の第一歩を確実にサポートいたします。また、多言語に対応したイベントプロデューサーもおりますので、グローバルなイベントにも柔軟に対応(⽇英を含む世界5ヵ国の⾔語にネイティブ対応)可能です。「海外のエグゼクティブやVIPを招いてイベントを⾏いたい」「各国の⽂化や商習慣に合わせてのプランニングが必要」「事務局業務から旅行⼿配までトータルで対応して欲しい」などのご要望があれば、ぜひご検討ください(Global Team 特設サイトはコチラ)。※無料相談はGlobal Team 特設サイトでお申込みいただけます。株式会社ピーク・ワンのサービスの詳細を記載した資料はすぐにダウンロードいただけます。お問い合わせは弊社までお気軽にご連絡くださいませ。