□ はじめに皆さん、こんにちは。展示会には異なる目的や関心をもった多くの来場者が訪れます。しかも、全ての来場者が製品について詳しい説明やサービスの情報を求めているわけではありません。そのため、無理なアピールは逆効果になることもあります。業界全体の動向を知りたいというだけの目的でブースを訪れる来場者も多く、そのような場合に単なる製品やサービスの説明を繰り返すことは、興味を損なう原因となります。したがって、展示会場でのコミュニケーションでは、台本通りの会話ではなく、柔軟な対応が求められます。即興で会話を進めつつ、相手の反応や態度を観察し、その都度適切なアプローチを取ることが重要です。一方的な営業トークを控え、来場者が自然に「YES」と言いたくなるようなシチュエーションを作り出すことを意識しましょう。まず最初に「興味のあることがあればご遠慮なく聞いてください」と伝え相手に安心感を提供することが大切です。その後、関心やニーズを引き出すために「現在の課題は何ですか?」といったオープンエンドの質問をすると効果的です。自社のブースを訪れた方々には、製品やサービスを押し売りするのではなく、来場者が求める情報やノウハウを提供する"先生"のような姿勢を目指しましょう。この記事では、展示会場における来場者とのコミュニケーション方法についてご紹介します。ぜひこの記事を参考にして、実践してみてください。1. 台本通りではなく即興(インプロヴィゼーション)インプロヴィゼーション(improvisation)とは、「im(〜しない)」「pro(先を)」「vision(見る)」から成り立ち、その場で自然に言葉や動きを創り上げる即興という意味を持ちます。もともとは演劇の世界の言葉で、脚本も設定も役も決まっていない状況で俳優同士が互いにアイデアを即興で出し合いながら物語を創る「即興演劇」を指します。現在、インプロ=即興演劇は世界的なビジネススクールでも注目され、『ビジネスインプロ』としてビジネスパーソンのトレーニングにも採用されています。確かに、マニュアルは社員全員が共有する基礎知識やスキルを標準化するのに有効ですし、台本(スクリプト)は顧客がどの社員と話しても同じ説明を受けられる利点があります。また、接客のミスや不一致を最小限に抑えることも可能です。しかし、展示会では、来場者ごとに異なる要求や問題に対応できないと満足度が低下して期待を裏切ってしまう可能性があります。展示会での接客経験がある方なら、画一的な対応が常に求められているわけではないことを実感されているのではないでしょうか。スカンジナビア航空の元CEOヤン・カールソン氏は、自著の中で顧客の評価が形成される瞬間を「真実の瞬間(MOT)」と呼びました。彼は、顧客ひとりひとりの事情や感情を考慮し、相手の立場で問題を解決できるのは現場の社員だけであるにもかかわらず、例外的な行動をするためには上司の許可が必要とされることで、せっかくの絶好のチャンスを逃してしまっていたと指摘しています。ヤン・カールソン氏は、最善の顧客サービスを「提案・決定・実行」できるよう、現場に大胆に権限を移譲しました。これにより、スカンジナビア航空は顧客本位のサービスを提供する企業へと進化しました。このアプローチは現在のマーケティングの主流となっています。思い返せば、学校でも人気のある先生は教科書通りに説明するだけではなく、頭の回転も速く、当意即妙の対応ができ、ひとりひとりの生徒に向き合ってくれていたものです。展示会におけるコミュニケーションでも同様の考え方が非常に重要です。人気の先生のように、来場者が求める情報やノウハウを即座に把握し、即興で提供することがポイントです。その場での対応次第で「サポートされた」と感じてもらうか、「突き放された」と思わせてしまうか、顧客の感情は大きく変わります。つまり、展示会でMOTをうまく扱うことができれば顧客の製品やサービスへの関心を高めることができますが、対応が悪ければ顧客を永遠に失うリスクもあります。この点を押さえることが成功につながります。2. 自然に「YES」と言ってしまうシチュエーション(承認誘導)を作り出すアメリカの社会心理学者ロバート・B・チャルディーニ氏は、著書『影響力の武器』で、「人を説得し、その人から望む行動を引き出すためのパターン」を提唱しています。彼は、人がどのように説得され、なぜ望ましい行動を取ってしまうのかについて心理学的見地から分析・解説しています。例えば、他人から何かしらの施しを受けた場合、人はその恩を返したいと感じる傾向があります(返報性)。日常の例として、スーパーで試食品を試して購入する理由が「美味しかったから」ではなく「無料で試させてもらったから」だったり、募金活動の前に一輪の花などの小さなギフトを渡されてつい寄付してしまうことが挙げられます。この心理的なメカニズムを展示会で活かすためには、企業側がターゲットに対し惜しみなく有益なコンテンツを提供し、「恩義」を感じさせることが大切です。それがパーソナライズされていたり、相手の期待を上回るものであれば、より深い「恩」を感じさせることができます。そのためには、マニュアル通りの接客ではなく、即興で相手のニーズを察知して対応することが求められます。一方的な営業では、せっかく自社ブースに訪れてくれた相手に不快感を抱かせる結果になるかもしれません。こちらから進んで何かを提供することで、相手に恩を感じさせ、それを返したいという気持ちに誘導するのです。そうすることで、ターゲットが無意識に望まれる行動(例えば、商談日程の確約など…)に向かう状況を作り出すことができるでしょう。3. 心理的安全性を確保する学校の先生が親身な指導を行ってくれたと感じる場面には、生徒が困っている際に個別に話を聞き、具体的な支援策を示して信頼関係を築いてくれた場合が多いでしょう。このような先生は、生徒の意見や質問を尊重し、否定しない環境を提供し、積極的に耳を傾けてくれます。安心できる先生だからこそ、生徒も信頼できるという点に疑問の余地はありません。展示会においても顧客に対して安心感と信頼感を提供することが重要です。心理的に安全な環境では顧客が自分のニーズや不安を自由に表現できるため、満足度が向上し、企業の信頼性も高まります。逆に、一方的な営業トークは接客時の心理的安全性を損なう可能性があります。一方的なトークは、顧客が意見や質問を挟んだり自分の考えを表明する余地を提供しません。このため、顧客が疎外感や不安を感じる原因となります。顧客の具体的なニーズや悩みを聞かずに営業トークを続けることは、顧客の問題を解決しようとする意図が欠けていると受け取られてしまうことがあります。一方的に情報を押し付ける形になるため、顧客が圧迫感を感じる可能性が高まります。これにより、顧客が心理的に安全ではないと感じることが増えます。一方通行のコミュニケーションでは顧客一人ひとりの背景やニーズに合わせた対応ができず、パーソナライズされたサービスの提供が困難になります。顧客のニーズや希望を確認するためにオープンエンドな質問を使用します。例えば、「どのような点が一番気になりますか?」や「これまでにどのような問題を経験されましたか?」などがあります。顧客の話をしっかりと聞いて理解を示します。また、一方的に「これが良いですよ」と勧めるのではなく、選択肢を提供して顧客が自ら選択できるようにします。例えば、「こちらの製品にはこういう特徴がありますが、ご興味はありますか?」と問いかけることが有効です。顧客が発言した内容に対して適度なフィードバックを行い、対話を深めます。例として、「なるほど、それは面白い視点ですね。もう少し詳しく教えていただけますか?」といった感じです。一方的に話し続けるのではなく、顧客の反応やペースに合わせて話を進めることが大切です。これにより、顧客が心理的に安心感を持ちやすくなります。このような工夫を取り入れることで、顧客は心理的に安全な環境で自分の意見やニーズを自由に表明でき、企業との信頼関係が深まりやすくなります。□ さいごに展示会場での来場者とのコミュニケーションにおいて重要なのは、「営業」ではなく「先生」の立場で接することです。そして、台本通りではなく即興で個々の来場者のニーズに合った柔軟な対応を心掛けることも忘れてはならないポイントです。「真実の瞬間(MOT)」の例からも、来場者ひとりひとりに合わせた接客の重要性が理解できます。さらに、来場者が自然に「YES」と言いたくなるシチュエーションを作り出すこと(承認誘導)も効果的です。また、心理的安全性の確保も欠かせません。顧客が安心感を持って自分のニーズや意見を表明できるよう、一方的な営業トークを避け、オープンエンドの質問や共感的な対応を取り入れるべきです。これにより、顧客との信頼関係を築き、長期的な関係を深めることが可能となります。以上のポイントを踏まえ、展示会での成功を手に入れてください。展示会は自社の価値を短時間でアピールする重要な場所です。この記事を参考に、ぜひ次回の展示会で実践してみてください。株式会社ピーク・ワンは、マーケティングを次のステップへ進化させたい企業様に豊富な実績を基にしたサポートを提供しております。また、イベント受付管理システム「レジスタ」や事務局支援クラウド「セクレタ」といったシステムも提供しております。当社が提供するイベントDXサービス「FrontDeskシリーズ」では、イベント受付からリード獲得までをサポートするさまざまなソリューションを展開しています。特に、「レジスタ」は展示会での来場者情報取得を支援する受付管理ソリューションであり、オプション機能の「Quick Lead」「Quick Flyer」「Quick Check-in」を活用することで、最新の展示会マーケティングをタイムラグなく実現します。さらに、株式会社ピーク・ワンには数多くの企業イベントの受付を構築してきたプロが在籍し、展示会イベント受付オンサイトサポートサービス「受付の達人」も提供しております。当社は30年以上の経験とノウハウを活かし、貴社のイベントを成功へと導きます。トラブルの未然防止、スムーズな受付運営、そして参加者一人一人に最良の体験を提供することで、イベント成功の第一歩を確実にサポートいたします。また、多言語に対応したイベントプロデューサーもおりますので、グローバルなイベントにも柔軟に対応(⽇英を含む世界5ヵ国の⾔語にネイティブ対応)可能です。「海外のエグゼクティブやVIPを招いてイベントを⾏いたい」「各国の⽂化や商習慣に合わせてのプランニングが必要」「事務局業務から旅行⼿配までトータルで対応して欲しい」などのご要望があれば、ぜひご検討ください(Global Team 特設サイトはコチラ)。※無料相談はGlobal Team 特設サイトでお申込みいただけます。株式会社ピーク・ワンのサービスの詳細を記載した資料はすぐにダウンロードいただけます。お問い合わせは弊社までお気軽にご連絡くださいませ。