□ はじめに 皆さん、こんにちは。展示会は、新製品やサービスの発表、ビジネス上の交流・関係構築の場として重要な役割を果たしていますが、裏腹に、多くの資源を消費してしまい環境に影響を与えることも少なくありません。今や、環境への配慮は重要なテーマで、企業が展示会を実施する際もこのことを忘れるわけにはいきません。毎年12月に東京ビッグサイトでエコプロダクツ展(「エコプロ」)が開催されていますが、環境配慮型製品・サービス(エコプロダクツ、エコサービス)に関する一般向け展示会として、NEW環境展と並び国内最大規模を誇っています。エコプロダクツ展の2023年の来場者数は66,826人で、コロナ前の約16万人に比べると減少しましたが、それでも多くの人々が訪れました。一方、NEW環境展の2024年の来場者数は92,121人で、こちらもコロナ前に比べ減少しましたが、依然として高い関心を集めています。これらの展示会では、小中学生の社会科見学も行われ、世の中の環境問題への関心の高まりが感じられます。また、企業や一般消費者の環境問題への関心の高まりは、エコフレンドリーな技術や製品への興味にも結び付いており、その情報交換の場を提供する重要なプラットフォームとしての役割を担うエコプロダクツ展やNEW環境展は、毎年多くの来場者が集まる一大イベントになっています。今の時代、大企業に限らずどの企業にとっても、環境との共生を無視すれば存続が危ぶまれる状況があります。国連が定める「SDGs」の推進に向け、環境汚染や地球温暖化問題の解決は避けて通れない課題です。特に資源の有効利用、新エネルギー・省エネルギーの推進、CO2排出削減技術の活用は、企業にとって最重要の取り組みです。加えて、エコフレンドリーな展示会の実現は、環境への貢献だけでなく、企業イメージの向上、顧客ロイヤリティの強化、ビジネス成果への影響ももたらします。企業の社会的責任 (CSR: Corporate Social Responsibility) を果たす一環としてエコフレンドリーな取り組みを行うことで、持続可能な社会の構築に寄与します。一見コストが掛かるように見えるかもしれませんが、長期的にはブランド価値の向上やコスト削減につながるでしょう。サステナブルな未来構築に貢献する展示会運営をやり遂げることには大きな意義があると言えるでしょう。この記事では、エコフレンドリーな展示会運営をしながら企業の社会的責任(CSR)も果たすためのアイディアとその方法をご紹介したいと思います。ぜひご一読ください。1. トリプルボトムラインとCSRピラミッド ~CSRが示す持続可能な未来 現代のビジネス環境において、企業の社会的責任(CSR)はますます重要視されています。特に展示会の場では、CSRの観点を取り入れることで企業の信頼性を向上させ、持続可能なビジネスを示す絶好の機会となります。まず、CSRの概念を理解するために、ジョン・エルキントン氏とアーチー・B・キャロル氏の理論を紹介したいと思います。その後、展示会におけるCSRの取り組み方について考察したいと思います。ジョン・エルキントン氏は「トリプル・ボトム・ライン(Triple Bottom Line, TBL)」という概念を提唱した人物として知られています。このモデルでは、企業を「経済的利益」「環境負荷」「社会的影響」の三側面から評価しています。エルキントン氏は企業に対し、経済的利益だけでなく環境保護や社会貢献にも注力することを奨励していました。例として、ある国際的なIT展示会ではこのTBLを採用し、カーボンフットプリントの削減、再生可能エネルギーの利用、廃棄物リサイクルシステムの導入を行いました。また、地元コミュニティと協力し、小規模企業やアーティストを招待することで社会的影響を強化しました。念のための補足ですが、2018年にエルキントン氏自身がこの概念を「撤回(recall)」し、再評価を促しています。その背景には、TBLが広く採用される一方でその本来の意図が薄れてしまったことがあります。一方、アーチー・B・キャロル氏は「CSRピラミッド」を提唱した人物として有名です。このモデルは企業の責任を「経済的責任」「法的責任」「倫理的責任」「慈善的責任」の四つの層に分けて説明しています。まず、企業は経済的に安定していることが大切です。その上で、法律を守りながら活動し、さらに倫理的に正しい行動をとることが求められます。そして、必要に応じて慈善活動を行うことも大切です。例として、ある企業の展示会ではキャロル氏のCSRピラミッドを取り入れ、多面的なアプローチを実践しました。展示会の収益を上げること(経済的責任)、法的要件を遵守すること、製品の誠実な説明と来場者のデータ保護を徹底すること(倫理的責任)を行いました。また、展示会の収益の一部を地元の医療施設に寄付するなど慈善的責任も果たしています。これらの例に見るように、展示会は製品やサービスの紹介だけでなく、企業がCSRを実践し社会的責任を果たすための重要なプラットフォームにもなります。エルキントン氏の「トリプル・ボトム・ライン」やキャロル氏の「CSRピラミッド」を取り入れてみることで、企業は持続可能なビジネスモデルを実現し、ステークホルダーからの信頼を高めることができます。展示会を通じて社会的責任を果たし、持続可能な未来を築く一歩を踏み出しましょう。 2. エコフレンドリーな展示会 ~CSR視点で考える持続可能な運営方法 展示会におけるCSRの実践方法について具体的に考察してみたいと思います。展示会は単なる商談や製品紹介の場にとどまらず、持続可能な未来を真剣に考える機会にすることもできます。エルキントン氏のTBL(「トリプル・ボトム・ライン)の視点から見ても、環境への配慮は重要で、環境保護と企業の成長は両立できることを示す好機にできるはずです。例えば、パンフレットやカタログのペーパーレス化を進めるためにデジタルソリューションを活用するのも一つの手です。来場者がQRコードをスキャンするだけでオンライン資料やデジタルパンフレットにアクセスできるようにすることで、手間を省くことができます。この取り組みは多くの展示会で既に実施されており、企業の環境意識を示すメッセージにもなります。展示会のエコフレンドリーな会場設営には、段ボール素材や再利用可能なハニカムボードの使用が有効です。これにより使い捨てプラスチックの削減が実現します。また、エネルギー効率の高い照明や設備の導入、および適切な照明使用の抑制も重要な要素です。さらに、廃棄物管理の観点からは、年号や回数を記載しないデザインを採用することで、展示会後もブースや装飾品を再利用またはリサイクルできる体制を整えることができます。これらの施策は「環境」に大きな影響を与える行動であると同時に、その情報発信が「社会的影響」にも大きなポジティブな効果をもたらすことが期待されます。企業が環境意識を強調することで、社会的影響を持たせることができるということです。次に、エネルギー効率の向上についてです。省エネルギーのLED照明は効果的な手段の一つで、従来の照明に比べて最大75%のエネルギーを節約することができます。また、再生可能エネルギーを利用した電源システムを採用することで、展示会自体のカーボンフットプリントを大幅に削減することもできます。このように、展示会の各要素にエコフレンドリーな取り組みを導入することで、企業はCSRを実践しながら持続可能なビジネスモデルを構築できます。環境、社会、経済の持続可能性を同時に追求することで、企業はブランド価値の向上と顧客ロイヤルティの強化を図ることが可能です。エコフレンドリーな展示会運営は、未来のビジネス環境を先取りし、ステークホルダーからの信頼をさらに高めるための重要な一歩と言えるのではないでしょうか。 3. 持続可能な未来を築く ~多様性とインクルージョンを取り入れたCSRの実践 企業が社会的責任を果たすため、展示会を多様性(Diversity)とインクルージョン(Inclusion)の視点から考えてみたいと思います。例えば、展示会に多様なバックグラウンドを持つ人々が参加できるような配慮を行います。多様性を持たせて、インクルーシブな環境を作り出します。性別、年齢、人種、文化、能力などの多様性を尊重し、誰もが参加しやすい環境づくりを心掛けてみます。また、多様性とインクルージョンを実現するための具体的なステップとして会場のアクセシビリティを向上させます。身体的な制約のある方々が快適に参加できるよう、バリアフリー設計や手話通訳の配置、点字パンフレットの提供なども行います。さらに、国際的な展示会ではパンフレットや案内標識を多言語で提供し、海外からの来訪者にも理解しやすい環境を提供します。McKinsey & Companyの報告書「Diversity Wins: How inclusion matters」によれば、エグゼクティブ・チームにジェンダーの多様性がある企業は、収益が業界の中央値を超えている確率が25%高いという結果が得られています。また、エグゼクティブ・チームに人種・民族の多様性がある企業は、収益が業界の中央値を超えている確率が36%高いと示されています。これらのデータが示すように、多様性とインクルージョンは企業の経済的パフォーマンスにもポジティブな影響を与えています。多様性とインクルージョンへの配慮は、アーチー・B・キャロル氏のCSRピラミッドにおける「慈善的責任」を果たすための重要な要素でもあります。エコフレンドリーな展示会運営にこれらの視点を取り入れることで、企業は単なる環境負荷の低減だけでなく、多様性の尊重を通じて、より包摂的な未来を築くための一歩を踏み出せます。展示会の来場者が、これらの取り組みを通じて持続可能な未来を共に目指す意識を共有することで、企業のCSR活動は一層強化され、結果としてブランド価値の向上や顧客ロイヤリティの強化につながるでしょう。 □ さいごに 読んでいただき、ありがとうございました。展示会は、製品やサービスの紹介のみならず、企業のCSR活動をアピールする場としても最適です。環境保護と社会貢献を兼ね備えた展示会運営は、企業イメージの向上、顧客ロイヤリティの強化、さらに持続可能な未来の構築へとつながるのではないでしょうか。企業が展示会を通じてCSRを実践することで、持続可能な社会の実現に寄与し、新たなビジネス機会を創出することもできます。CSRを意識したエコフレンドリーな展示会の運営方法を模索し、追求していきましょう。ぜひ実践に向けた第一歩を踏み出してみてください。株式会社ピーク・ワンは、イベントマーケティングを次のステップへ進化させたい企業様に豊富な実績を基にしたサポートを提供しております。当社が提供するイベントDXサービス「FrontDeskシリーズ」では、「レジスタ」とイベント事務局業務効率化を推進するクラウドサービス「セクレタ」の2つのラインナップがあり、イベント受付からリード獲得までをサポートするさまざまなソリューションを展開しています。「レジスタ」は、貴社の展示会・イベントを成功に導くトータルパッケージサービスです。お手持ちのスマートフォンを展示会におけるリード獲得デバイスとして活用できる「Quick Lead」、リーダーにかざすだけで来場者の欲しい資料を簡単に提供できる「Quick Flyer」、セミナー・セッションへの申込状態を瞬時にチェックできる「Quick Check-in」、来場者のアクションや全体的な統計数値をリアルタイムに可視化できる「Event Stream」で、展示会・イベントマーケティングをタイムラグなく実現します。今回のブログでご紹介した、パンフレットやカタログのペーパーレス化を進めるためのデジタルソリューションとして「Quick Flyer」を活用するのも一つの手です。「Quick Flyer」はPDFやZIPなどのファイルとして資料を送付するため、これまでのように大量の印刷物を用意する必要がありません。印刷物に掛る費用を大幅に削減できますし、企業の環境意識を示すメッセージにもなります。また、「Quick Flyer」は展示会ブース内のどこにでも設置ができ、営業担当がいないところでも資料配布が可能ですので、担当者人数の制限にとらわれずリード獲得を実現することも可能となります。また、株式会社ピーク・ワンには数多くの企業イベントの受付を構築してきたプロが在籍し、展示会イベント受付オンサイトサポートサービス「受付の達人」も提供しております。当社は30年以上の経験とノウハウを活かし、貴社のイベントを成功へと導きます。トラブルの未然防止、スムーズな受付運営、そして参加者一人一人に最良の体験を提供することで、イベント成功の第一歩を確実にサポートいたします。さらに、多言語に対応したイベントプロデューサーもおりますので、グローバルなイベントにも柔軟に対応(⽇英を含む世界5ヵ国の⾔語にネイティブ対応)可能です。「海外のエグゼクティブやVIPを招いてイベントを⾏いたい」「各国の⽂化や商習慣に合わせてのプランニングが必要」「事務局業務から旅行⼿配までトータルで対応して欲しい」などのご要望があれば、ぜひご検討ください(Global Team 特設サイトはコチラ)。※無料相談はGlobal Team 特設サイトでお申込みいただけます。株式会社ピーク・ワンのサービスの詳細を記載した資料はすぐにダウンロードいただけます。お問い合わせは弊社までお気軽にご連絡くださいませ。