展示会やプライベートイベントは、短時間で多くの見込み客に自社製品を知ってもらう場でとして認識されています。企業は大中小問わず様々な展示ブースを設置し、できるだけ多くの来場者に資料を配布しリード情報の獲得を行うことを目的としています。コロナ禍にオンラインイベントが急増し、コロナが五類に移行した今も、その傾向は続いています。オンラインイベントの台頭により、多くの企業がイベント戦略の見直しを迫られました。ウェビナーやバーチャル展示会など、新しい形態のイベントが次々と登場し、マーケティング担当者は対応に追われています。しかし、単にコストや手軽さだけでリアルとオンラインを使い分けていないでしょうか。この記事ではこれからのリアルイベントのマーケティング活動における位置づけを改めて考えてみたいと思います。1. 個客視点へのシフト:新たな価値の創出従来のイベントマーケティングは、多くの見込み客に一度にアプローチする効率重視型でした。例えば、大規模な展示会では、ブースに立ち寄る人数や配布したパンフレットの数、獲得したリードの数が指標とされることが多かったのです。しかし今は、顧客との関係性が重要視されています。量より質、そして長期的な関係構築が求められる時代になってきているのを感じてます。ここで先日のブログでも触れた「N=1」の考え方を思い出していただきましょう。これは、顧客を一つの属性やセグメントではなく、個人として捉える視点です。例えば、「30代の男性会社員」というカテゴリーで捉えるのではなく、「特定の課題を抱え、独自のニーズを持つ個人」として見るのです。これにより、よりパーソナルな体験を提供できます。顧客一人ひとりに合わせたアプローチが可能になり、満足度の向上につながります。そして、体験提供以上に重要なことは、個々の顧客の課題を把握し、受け止めることです。リアルイベントでは、顧客と直接対話することができるので、アンケートやデータ分析では得られない深い洞察を得ることができます。テクノロジーの進化も、この個客対応を後押ししています。デジタル化された名刺情報で、初対面でも瞬時に情報を得られます。顧客の所属企業、役職、過去の購買履歴などを即座に確認し、適切な対応が可能になります。さらに、ヒアリング内容をすぐにデジタル化し、AIでインサイトを得ることも可能になりつつあります。例えば、会話内容をリアルタイムで文字起こしし、キーワード分析を行うことで、顧客のニーズをより正確に把握できるのです。リアルイベントの価値は、あるテーマに興味のある来場者を単なる「顧客カテゴリ」として捉えるのではなく、これからは、一瞬にして顔と名前と仕事を持つ「一個人」とダイレクトに関われることへと変わっていくというのが私の仮説です。2. リアルタイム対応の力:顧客ニーズへの即時対応リアルイベントの最大の強みは、顧客との直接対話です。その場で顧客のニーズに応えられる即時性が、オンラインイベントにはない魅力です。例えば、製品デモンストレーションの最中に顧客から質問が出た場合、その場で詳細な説明や追加のデモを行うことができます。もちろんオンラインでも質問の受付などで個別のリクエストに対応することは可能ですが、個別感をもって対応できることこそが、リアルイベントの強みであると思います。その強みを活かし、顧客の立場に応じたコミュニケーションも臨機応変に対応を変化させることが可能になります。経営層と現場では、同じ製品でも視点が大きく異なります。この違いを理解し、適切に対応することが顧客満足度を高めます。例えば、ある製造業向けのソフトウェアを紹介する場合、次のようなアプローチの違いがあります。経営層には、ビジネス全体への影響やROI(投資対効果)を強調します。「このソフトウェアを導入することで、生産効率が20%向上し、年間のコスト削減額は約1億円に達する見込みです」といった具体的な数字を示すことが効果的です。一方、現場担当者には、具体的な操作方法や日々の業務でのメリットを説明します。「このボタンをクリックするだけで、これまで手作業で30分かかっていた在庫確認が瞬時に完了します」といった、実務に直結する利点を強調するのです。同じ製品でも、視点に合わせた説明が効果的です。このようなきめ細かな対応は、リアルイベントだからこそ可能なのです。また、リアルイベントでは、顧客の反応を直接観察でき、即座にフィードバックを得られます。例えば、プレゼンテーション中の聴衆の表情や態度から、内容の理解度や関心度を読み取ることができます。顧客の興味や困っている点をリアルタイムで把握し、すぐに対応策を講じることができるのです。この迅速さが顧客満足度を高め、商談成功の確率を上げます。直接対話を通じて、より深い関係を築けることも大きな利点です。顧客が直接意見を伝え、それに即座に応答することで、顧客は自分が重要視されていると感じます。例えば、顧客の要望をその場で製品開発チームに伝え、今後の改善計画を即座に共有するといった対応が可能です。これがブランドへの忠誠心を高め、長期的な関係構築につながるのです。3. オンラインとリアルの役割分担:効果的なマーケティング戦略現代のマーケティングでは、オンラインとリアルの役割分担が重要です。両者を効果的に活用することで、総合的な効果を最大化できます。それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることが成功への鍵となります。オンラインイベントは、大規模な情報提供に適しています。例えば、新製品発表会をオンラインで開催することで、世界中の顧客に同時に情報を届けることができます。地理的制約を超えて多くの人にリーチでき、認知度拡大に効果的です。また、参加者のログデータを分析することで、どの内容に最も興味が集まったかを定量的に把握できるのも利点です。コスト面でも効率的で、短期間で多くの参加者を集められます。例えば、オンラインセミナーであれば、会場費や人件費を大幅に削減でき、準備期間も短縮できます。また、アーカイブ配信を行うことで、イベント後も継続的に情報を提供し続けることができるのです。一方、リアルイベントは深い関係構築や個別ニーズへの対応に適しています。直接対話で具体的な課題に対するソリューションを提供でき、顧客の信頼感を高められます。例えば、製品の触感や使用感を直接体験してもらうことで、オンラインでは伝えきれない価値を提供できます。また、顧客同士の交流の場を設けることで、ユーザーコミュニティの形成を促進することもできるのです。役割を明確に分担することで、より効果的な戦略を展開できます。例えば、次のようなステップを踏むことが考えられます:オンラインで広く情報を提供し、潜在顧客の興味を喚起する。オンラインセミナーで製品の概要や利点を説明し、詳細情報に興味を持った参加者を特定する。興味を持った参加者をリアルイベントに招待し、製品の実機デモや個別相談を行う。リアルイベント後も、オンラインでフォローアップを続け、長期的な関係を維持する。このステップバイステップの戦略が、顧客のエンゲージメントを高め、コンバージョン率の向上につながります。オンラインイベントのデータを活用し、リアルイベントでの対話をパーソナライズすることも効果的です。例えば、オンラインセミナーでの質問内容や視聴行動を分析し、その顧客が最も関心を持っている点を把握します。そして、リアルイベントでその話題を中心に据えたプレゼンテーションを行うのです。こうすることで、顧客一人ひとりのニーズに合わせたコミュニケーションが可能になります。両方のイベントからのフィードバックを統合し、全体戦略を改善することも重要です。オンラインのデータとリアルでの対話から得た洞察を組み合わせ、顧客のニーズにより的確に応えられる製品開発やサービス改善につなげることができます。例えば、オンラインアンケートで得た定量データと、リアルイベントでの顧客の生の声を組み合わせることで、より精度の高い市場分析が可能になるのです。まとめリアルイベントの意義は、大量の見込み客へのアプローチから、顧客を「個客」として捉え、深い関係を築くことへと進化しています。これにより、顧客満足度の向上やブランドへの忠誠心強化が期待できます。例えば、リアルイベントで構築した信頼関係をベースに、長期的な取引関係に発展させたり、顧客からの紹介で新規顧客を獲得したりすることが可能になります。同時に、オンラインとリアルの役割分担を明確にし、効果的に活用することで、総合的な効果を最大化できます。オンラインで広範な情報提供を行い、リアルで具体的な提案や関係構築を行う戦略は、これからのイベントマーケティングに有効です。この組み合わせにより、効率的な顧客獲得と深い顧客理解の両立が可能になります。これからのイベントマーケティングでは、個客視点の重要性を再確認し、オンラインとリアルの最適なバランスを見つけることが鍵となります。例えば、AIを活用して顧客データを分析し、それぞれの顧客に最適なタイミングと方法でアプローチする「ハイブリッドイベント戦略」の構築が考えられます。このアプローチで、より効果的なマーケティング活動を展開し、顧客との関係を強化していけるでしょう。単なる製品販売にとどまらず、顧客の課題解決パートナーとしての地位を確立することが、これからの企業に求められる姿勢なのです。リアルとオンライン、そしてテクノロジーを融合させた新しいイベントマーケティングの形が、ビジネスのこれからを切り開いていくことでしょう。株式会社ピーク・ワンの提供するイベントDXサービス「FrontDeskシリーズ」では、イベント受付からリードの獲得を支援する様々なソリューションを提供しております。今後のロードマップでは本記事で紹介したような来場者を「個客」として捉え、より有益なイベントマーケティングを実現できる機能やソリューションを追加してまいります。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。